「カーシェア」というパラダイムシフトを創るタイムズカープラス

2018/4/15付 日本経済新聞にこんな記事があった。

カーシェア市場で争奪戦 日産参入、トヨタは新会社

自動車を所有せずに共有する「カーシェア」が本格的な普及へ正念場を迎える。利用者数は2017年に108万人と3年で倍増。車両数も都市部を中心に2万台を超え、今後2年でさらに4割増える見通しだ。

この108万人とカウントされた利用者の80%超を寡占するプロダクトがある。それが『タイムズカープラス』だ。

僕も個人的に2年以上に渡って『タイムズカープラス』を使い込んできたこともあり、お気に入りのプロダクトであるこの『タイムズカープラス』について取り上げてみたいと思う。

なお、いきなりだが以下のようなユースケース、コスパ重視の車利用にはタイムズカープラスをおすすめできる。

この記事ではパーク24グループの2017年10月期 決算資料および僕自身の体験から、タイムズカープラスの概要・シェア・戦略・UXについてまとめてみた。上記にピンとくる方にぜひ読んでみてもらいたい。

パーク24グループとは?

1997年に創業。以来、主にパーキング事業を主軸に成長してきた企業。街中で「Times」という目印のコインパーキングを見かけることは少なくないだろう。パーキング2009年よりカーレンタル事業、そして2011年より今回取り上げるカーシェア事業を開始している。

堅調な”駐車場” + 次の柱の”モビリティ”

17年10月期の売上は2,329億円(+YoY 19.8%)と堅調に成長し続けている(投資フェーズのため営業利益ベースでは減少)。パーク24のビジネスは実物である土地や車両をアセットに収益を積み上げるモデルであり、「土地と車」の価値が急激に毀損されない限り、堅調な推移をし続けるB/S型の企業だ。

グループの中で目を引くのがモビリティ(=カーレンタルとカーシェア)事業だ。特にカーシェア事業である『タイムズカープラス』への大きな投資と急成長は目をみはるものが有る。

以下にカーレンタル事業とカーシェア事業の売上と営業利益の推移をまとめてみた。

カーレンタル事業の売上・営業利益推移

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カーシェア事業の売上・営業利益推移

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カーシェア事業単体の営業利益率は15%超と驚異的な数値を叩いており、インターネットメディアの利益率と見紛う水準だ。

推定80%超の圧倒的なマーケットシェア

国内B2Cカーシェアのプレイヤーは『タイムズカープラス』のほか、オリックスが手がける『オリックスカーシェア』、三井不動産リアルティが手がける『カレコ』を含めた3つが主要なプレイヤーとなっている((他にも10プレイヤーほどいるが、規模的に3強))。

中でもオリックスは2017年2月のプレスリリースによると2002年よりカーシェア事業を開始しており、当時からするとかなりの先鋭的なチャレンジだったように思える(力を入れ始めたのは最近のようだが)。

各社が公開している最新の資料より主要な情報をまとめてみた。ただしオリックス、三井はいずれもカーシェアセグメントにおける主要な指標を部分的にしか公開しておらず(交通エコロジー・モビリティ財団 | 全国のカーシェアリング事例一覧 2017/3集計 )を参考とした。売上は「車両一台あたりの月次売上」がタイムズカープラスと同じ水準と仮定した際の推測値となる。

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現時点での車両台数ベースでのマーケットシェアを概算すると82%に登る。後発ながら既存事業のアセットを武器に一気にトップへ躍り出たことがわかる。

筆者の推計FY2017時点でのカーシェア業界の市場規模は280億円規模と見積もられる。YoYで20~30%ずつ成長しているタイムズを筆頭に引き続き拡大し続けそうだ。

また、カーシェアをビジネス的に切ると、「車両を人口密度に応じて配置し、一台あたりの収益性(回転数↑とメンテコスト↓)をどこまで高められるか?」という勝負かなと思っている。

その初めのボトルネックは「車両を配置できる駐車スペース」だ。

パーキング事業で長い実績とシェアを誇るパーク24は全国に18,255件ほどのスペースを保有しており、現在このうちの55%がカーシェア付帯のパーキングとなっている。単純に全てをカーシェア付帯にする価値はないかもしれないが、数字上はまだまだ普及の余地が大きそうだ。

タイムズカープラスのUX

僕自身、オリックス・カレコやDeNAが手がける個人間のカーレンタルサービス『Anyca』を含めたカーシェアサービスを一通りテストした。

その上で現在はタイムズカープラスのみを 1~2回/week 利用している。これら全てのサービスの中で、タイムズカープラスはオンラインで車を探す〜利用した車を返却するまでのトータルのUXが圧倒的に良い。その要素を分解してみる。

圧倒的ステーション数

前述の比較であったとおり、カーシェアの車両数・ステーション数共に他社に6倍以上の差をつけてタイムズカープラスが圧倒的なシェアを誇っている。

自宅や職場近辺、ちょっとしたお出かけ先、旅行先など、どこへ行っても利用ができるというのがタイムズカープラスUXの圧倒的な強みだ。僕も仙台に行った時は東京よりもステーションが至る所ににあったため、大変重宝した。

慣れない旅先で、いつもと同じ装備のクルマがスマホで探せてサクッと使える、というのは新しい体験で素晴らしかった。

2タップで予約完了できるモバイルアプリ

タイムズが提供しているモバイルアプリ『クイック検索』は借りたい時間にあわせて、availableな車両を地図上に表示してくれる。もちろん借りたい場所、時間、定員、車種などでの絞込も可能。現在地からどのくらいの距離にステーションがあるのかが直感的にわかるUIはかなり使いやすい。

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また車両の予約は

のたった2タップで完了する。

オンデマンドに「今使える車両」を探すにも、「今週末使いたい車を抑えておく」にも、この予約のハードルが低いことはサービスを使い続ける理由になる(車両の予約は15分前から指定できる)。

アプリ自体も定期的にアップデートされ、少し前までWebViewで補っていたページがNative化していたりと、きちんとデジタルUXにも投資がされている。

細かな”乗車体験”の設計

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タイムズカープラスは『月額+15分毎に206円~』という課金の仕組みを取っている。月額1,030円はそのまま無料利用料金として利用できるため、75分ほどは月額の範囲内で利用できる。レンタカーと異なり、ガソリン+保険について考える必要ないというのは体験が良い。

また全車両に給油用のクレジットカードがついており、シェア時間中にそのカードを利用して給油や洗車を行った場合は利用時間が割引される。3歳児以上が利用できるブースターシートがついているのも子連れには嬉しい。

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タイムズの成長戦略

最後にタイムズのIR資料の中から成長戦略を読み取ってみよう。

車体あたりの売上を伸ばす

レンタルやシェアリングにとって最も機会損失になるのは資産が寝ている時間だ。特にタイムズは車両数をYoY +20%超のペースで急増させているため、この休眠時間を減らす施策へ同時に力を入れないとコストばかりが膨らむ。

タイムズが力を入れているのが平日利用を埋めてくれる法人アカウントの増加だ。すでに全アカウントの40%近くが法人アカウントであり、平日の休眠時間を減らす施策を実施している。

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この他、一般利用者の利用時間を高める方法として、

などが設計されている。

メンテコストの抑制

「資産が寝ている時間を増やしてしまう要因」としては事故が一番怖い。タイムズは事故防止のための投資を積極的に行っており、全車両へバックモニターが設置された。

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また2017年にはアラウンドビューモニターを装備した日産「ノート」を1,000台導入するという施策も実施している。

アラウンドビューモニターは、駐車時などに車両を上から見下ろす視点で周囲を表示します。さらに周囲の移動物を検知し、アラウンドビューモニターのディスプレイ上の表示と音でドライバーの注意を喚起する機能があり、ドライバーの方がいつでも安心して運転できるようサポートします。

高機能装備を広く導入することで、利用者の体験をできるだけ統一し、利用者全体のヒューマンエラー率を下げるということも期待できそうだ。

カスタマーサポートへの入電が抑えられるように自社のヘルプページも充実させており、車体あたりのコストを抑えるために着実に施策を実施していることが伺える。

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”Ha:mo乗り捨て”

乗り捨てはカーシェアを使っていて最も期待しているサービスの一つ。都内を中心に乗り捨てサービスの実証実験が行われている。

2015年4月から展開しているトヨタ自動車との実証実験。東京都心部を中心にステーションを設置し、超小型EVによるワンウェイトリップ方式(乗り捨て型)のシェアリングサービスの有用性を検証する。

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『タイムズカーシェアであればどこのタイムズ駐車場に停めても良い、近くが空いていなければ、最近順にサジェストされる』といった機能が実現すると、例えば行きは電車で、帰りは荷物を積んでクルマで、などが可能に。

まとめ

ここまで、タイムズカープラスの概要について、IRとUXの両輪から見てきた。

現在は「12時間以上の予約」などのケースでは他社やレンタカーのほうが安く済む場合もある。しかしこの点についてもカーシェアというマーケットの拡大によって状況が変わってきうる。その中でも圧倒的シェアをもつタイムズが最終的にはコストやUXの両面で競争優位を発揮するのではないだろうか。

タイムズはモバイルアプリでの予約からオフラインでの利用体験まで、本当に細かく最適化されている。このUXから学ぶことも多く、ぜひいろんな方にサービスを実験してほしいなと思う。