Censoring is Day One

スマホから変わる世界(前編) | (後編)」という未来へ深い洞察が込められた檄文に感化された僕も自分なりに「未来はどこへ向かうか」を考え文字に落とそうと思い筆をとることにした。
 
先の「スマホから変わる世界」の締めくくりに、シェアリングエコノミーとして台頭したように見える巨大サービスやそのトレンドを、別の視点で読み解いている一節がある。
もう少し長い目でこういう風に物事を考えると、サイバー空間とリアル空間接点を再構築するというパーツをまだ作っている時期に今はあります。ちょうどスマホが出てきた時にスマホサイバー空間を作るためのアプリやSDKなどのツールが作られたみたいな状態です。スマホから変わる世界(後編)
 
サイバー空間とリアル空間の接点を再構築するとはどういうことなのか。そしてなぜそれが重要なのか。この2点が目下の自分の関心事そのものだ。
 
サイバー空間とリアル空間の接点には「リアルの何かをトラッキングし、動かすセンサ」と「そのセンサをサイバー空間から操作する仕組みとインターフェース」の2つが必要になる。
センサの役割を担うプロダクトは2018年現在、多くの場合でモバイルが担っている。同時に、後者の「操作する仕組み」においてもモバイルが主役だ。
これは人がモバイルを持つこと自体がこの10年のトレンドだったからだろう。世界中でモバイルをもつ人が増えたから、モバイルでセンシングでき、動かせるサービスが生み出された。
Airbnb は「家の空き状態、鍵の状態」をセンシングする役割を「リスティング機能」として提供した。管理者はリスティングした家の状態を、いつでもモバイルから変更できる。そして旅する人々はモバイルを通じて在庫を予約する。
予約台帳のトレタは、飲食店に配布されたタブレットに、空席情報をセンシングさせ、在庫情報を可視化している。接続された様々なモバイルグルメサービスからこの空席に予約ができる。
Uber ではタクシーにつけられたiPadが「車体の位置と空き状況」をトラックするセンサーの役割を果たす。利用者はモバイルから配車リクエストを出すと、最寄りの信頼されるドライバーがマッチングされる。
メルカリでは「家の中にあるモノの状態や価格」をセンシングする役割を、モバイルアプリが提供する「出品機能」が果たした。Instacart やDoorDashなどのデリバリーサービスでは、「今この瞬間空いている人の時間」をモバイルにセンシングさせている。もう挙げるとキリがない。
シェアリングエコノミーと呼ばれるサービスの本質は流動性だと考えている。サイバー空間にこれまで流動性が低かった「なにか」を載せ替えることで流動性を持たせる。「なにか」の状態を正確にトラックし、管理できるようにすることがすべてのDay oneになる。
モバイルは「空き部屋」「空席」「空きタクシー」「余剰の服や家に眠る備品」「今暇な人」をセンシングする機械となり、それらにサイバー空間からアクセスする機械として両面の役割を果たした。

次に変化する前提

ここから未来にかけて大きく変わりうる前提はなにか。それはセンサがモバイルではなくなることだ。おそらく確定的だろう。
センサをあらゆるモノにくっつけよう、という発想のプロダクトであるIoTはこの10年で確実に伸長したが、モバイルほどの汎用性がない。
最適なセンシング機能し設計し、製造・運用しなければいけないIoTは、コストの問題やDistribution の問題があり「我々の生活を変えた」とは言い難い。しかしそれも次の10年には確実に解決される問題だろう。
モバイルより遥かに小さく、それぞれのモノに最適なセンシングが社会に実装されると、それが本当のサイバーとリアルの接合の始まりを起こす。プロダクトや事業を手がけるものとして、これほどワクワクする機会はないのではないか、と思う。
一つ、その社会実装にビジネス・プロダクトの両面で成功している企業を挙げるとするならカーシェア事業を手がけるパーク24が思いつく。日本全国の駐車場と、そこに配置された数万台のカーシェア車両に対し、燃料・空き状況・位置情報を正確に把握する独自センサを実装し、ユーザーはいつでもモバイルから予約が可能に。カーシェアという市場を生み出した。
 
 
「たまの短時間のお出かけに使いたい」というB2C需要や「営業車両をもたずに済む」というB2B需要をうまく吸収し、1台あたりの収益は平均で120万円に登る。2010年の本格稼働から、すでに「車両を増やすほど儲かる」というエコノミクスが成立しているのは驚異的だし、「この事業を開始するために2009年にマツダレンタカーをM&Aで取得した」という先見性もエグい(だって2009年はUber が創業した年ですよ????)。
サイバー空間とリアル空間をつなぐためのセンサが社会に染み込んでいくことが確定的だとしたとき、「どこに、どのタイミングで、どういうセンサが必要となるか」「それをつかうとどんな発明ができるか」が大きなIssue だと思う。そのステップを描き、実践するのが我々のような発明家の役割であるとも思う。すなわち、未来に生き、欠けているものを創る力だ。
先のTimes car plusのように、車両を管理するというのは旧来コマツが建機管理のために行ってきたCOMTRAXという成功事例があった。世界中に散らばる6万台の建機を効率よく管理・操作するためにIoT化しよう、と。元は盗難防止やコスト削減のための文脈だったが、戦略的に新たなビジネスそのものに転換された。
これから社会に実装が求められるセンサは「用途から設計され、ユースケースそのものを含む」ものが大半になるだろう。センサそのものを発明する挑戦を自分もしていきたいなと思っている。(了)
 

 
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