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総合商社へ半年勤務した所感

いまの会社に就職して半年を数え終わったが、(批判でなく)大きくイメージと違った。学生時代の想像力が希薄すぎたというか、やりたかった事、ありたい自分と現状の乖離が凄すぎてびっくりしている。今日はその辺りを考えてみる。自戒を多分に含む。また個人的に節目ごとに職業生活を振り返る意味もあり。
新入社員の戯言。一応まだフレッシュな社会人。自分に向けて、1年、2年と職業生活を送った先に後ろを振り返った時のマイルストーンとして、なにか目に残る形で残しておく(ちなみに職種は総合商社プロジェクト系。これは内定時からの希望部署で、希望に沿った配属をしてもらったと思っている。)。
 

1. 雨のように降ってくる社内向け雑務に埋もれる

題で90%言い終えた。 結果としていつも「この仕事は誰のために、何のためにしているんだ」という感覚がある。
これは今の所属に起因するところも多分にあり、「大きなお金を投資して資産を管理していく」という投資型のビジネスモデルに携わっている場合、エンドユーザーの顔は見えないことが多い。入社して一番実感していることの一つ。
代わりにいかに当社で負うリスクを薄くしていくか、を社内でかなりのリソースをかけて検討するわけだ。顧客より社内を向いている時間が長いイメージ(もちろん最終的には顧客のためでもあるんだが、バリューチェーンの上流すぎて下流の顧客をイメージするのは難しい)。だから当然ではある、と納得している。
一方この「顧客を常に向いているか」というのはおそらく働く上での価値観の最上位に来る人も多々いると思うし、そういう人にはこのビジネスは辛いかもしれない。学生で総合商社で投資型ビジネスを希望する人が増えていると聞いたが(新聞によく載るからか)、自分の価値観はしっかり問いただしてから選択した方がいい。投資額で新聞を読むのは辞めよう。
自分にとっては:ベストの働き方じゃないけど悪くもない。

2. 会社が大きいことのデメリットに、目が向いていなかった

会社が大きすぎる結果として組織としての意思決定=仕事のスピードがかなり遅い。びっくりするものがある。これはどこの大企業勤務者も言う。そういうものなんだ、と納得するしか無いのかと諦めているのが実際だ。
”自社のビジネスモデルを変化させ続ける事で生き抜いてきた”文化のある総合商社だからこそ、意思決定のスピードはなかなか速いと思い込んでいたし、先輩方からもそう聞いていた。けれど最近の総合商社は小さいビジネスが減って、大きな投資額のビジネスが増えている。そうするといままで若手にも裁量を持たせて意思決定させてきた部分がどんどん減り、代わりに判断力のあるベテランにしか意思決定出来得ない仕事が増えているんだろうと感じる。これは中の人の実感であり、新聞に載る巨額の投資をみても実感できると思う。
さらに1つのリスクを経営企画・リスクマネジメント・財務・経理・コンプライアンス・法務その他たくさんのバックオフィスの人間が多角的に精査する。多方向から見ることにどうしても時間が掛かる。ある額以上のビジネスになると、こういった精査を義務化するシステムが社内に出来上がっているため、彼らの給料を賄うためにも小さくてお金にならないビジネスはどんどん切られていくわけだ。この傾向が続いて大丈夫なのかと思う時もある。多様性が失われてポートフォリオがものすごく偏ってしまうのではないか、実験的なリスクが取れなくなっていくのではないか、ビジネス間のシナジーが取りにくくなってしまうのではないかと。
お偉いさんが頑張って考えるところであると期待したい。一年目の自分にそういった情報が降りてくることもなく、知る由もないのが実態だ。
ちなみにどの総合商社もかなり強気の投資戦略を踏んでいるように見えるが、かなり無理をしている会社もある。体力に見合っていないだろうと。学生時代からネットD/E Ratioなど財務諸表を入手し、判断する手法を学んでおけばこの辺り判断できたのに、と思ってる。就活生には参考にしてほしい。言われるまでもないと思うが。
自分にとっては:できなことをガンガン任せてもらいながら失敗しながら学ぶ、という一年目の過ごし方を妄想してたんだけど、そんなにできないことは降ってこない。むしろ「できないこと」はほぼ課長クラスにジャッジが集中する。スピード感とは無縁の職業ライフは虚しさもあり、どうしたらいいかなーとよく思う。まぁ何とかするだろう。

3. 時給8,000円の「てにをは」

社内決裁のためのプレゼン資料などをつくると必ず上位の人に「てにをは」を直される。あれに全力を注ぐ部門長クラスの人がいる。これはネタじゃない。 彼らの給料は少なく見積もって年収1,500万円。日系サラリーマンのトップ水準だ。
1日の労働時間を8時間とすると、最低でも時給約8000円ほど生じている。そんな高級取りが血眼になって、命を注ぐ仕事。それが「てにをは」だったりするわけだ。
自分にとっては:脂が乗って意思決定も任せられている環境で、熱意を込められる仕事が「てにをは」だけだった場合、面白いんだろうかその仕事とは思ってしまう。お金はいいけど仕事の面白さやそこから学ぶことがない場合、続かなそう。

4. 成長実感がなく時間ばかり過ぎていく

「いまの時間を捨てた先に何が待っているか」を考えると、不安で身震いがする。自分に何か身についているのだろうか? 甘ったるいミルクコーヒーみたいな毎日に浸かって大志が折れていかないか?いまを楽しめない自分を、「楽しんでいる」と誤魔化して満足している振りをしているんじゃないか。など疑問を持つことは多い。正直今の職場はなかなかヌルいと思っており、先に挙げた構造のため機会を得ることも難しい。失敗して覚えるというサイクルが回しにくい。
社内業務に忙殺されている同期もいて、彼らみたいな生活もなかなか辛そうである。朝から終電超えるまで、社内手続き。社内での仕事の仕方を叩きこまれているけど、結構それって市場価値の形成にはならないのでは、と思うことも。社内価値の向上には役に立っているかもしれないが。(ツイッターで社内価値、市場価値を言葉を使い分けられてる方がいて、なるほどなと思った)。
そういう同期たちと昼飯をたまに共にするけど、本人の口からも「成長実感はない」と聞くことは多い。思いは同じようだ。
自分にとっては:他の誰にも真似できないレベルに達するような、市場価値を身につけたいと思っている。「社内で通用するけど社外では…」という能力に時間を投資してしまった場合、会社つぶれたときのリスクや海外事業を立ち上げる時に全く役に立たないリスクを孕んでいるから。会社は自分を守ってくれるものではないという思いが根底にあるから。しかしこの半年を使ってできた成長の小ささにかなり危機感を覚えている。どの分野で専門性を磨いていくべきかも定まらない。自分という人間にどういう市場価値をぶら下げるか、それを見定めるためのアクションをしないといけない。
就活時の自分にこれ見せたらどう思うか、が気になる。上記を踏まえてどう行動していくかが次の半年。とにかく半年分というキャリアができてしまった以上、踏み台にして行かないと。