個人と企業 - 真の長期的な関係を築く

「会社と社員の距離の取り方・距離のあり方」について自分が理想としている姿について書きたいと思います。この内容は以下のPodcastで話した内容をベースに編集したものになります。
 

自分の考えのサマリ


  1. 目指すべき事業の目的に応じて、目指すべき関係性は異なる。長期の事業を創りたければ、財務や管理なども含めて「長期に付き合える関係性の構築」が必要。
  1. 企業も個人も絶えず変化し続ける。両者の「志向」が重なり合うとき、一緒になり、そうでないときは離れる。本来は流動的な方が良い。
  1. 両者の志向は波であり、長く生きれば重なることは複数ありうる。そういうときに戻ってこれることもまた流動性。

前提: 事業がロングタームである

10Xという会社はStailerというプロダクトを通じて「日用品の買い物」というインフラを定義し、再構築する事業を行っています。
「小売の体験・業界を10Xする」ということがStailerにとってのプロダクトビジョンとなっており、それ自体が非連続なチャレンジです。到底1年や5年、10年というスパンで完結するようなものではなくて、永遠のベータ版としてずっとチャレンジをし続けていく必要があると考えています。
 
なので30年、50年と長く・太く経営できるようにどうやって工夫しようか、というのが経営者たる自分にとって大きなイシューで、さらに例えば以下のようなサブイシューがあります。
  • メンバーが気持ちよくコトに向かえるようにする
  • 財務不安を払拭し、短期的目標を気にせず走れるようにする
  • 「10xを創る」にフォーカスできるようにする
  • 統一された行動指針で最短で10xを目指すことができるようにする
  • 相互の専門性が折り重なって複雑性を処理できるようにする
 
こうしたイシューへの取り組みに対しては「銀の弾丸」は存在しません。日々少しずつの積み上げの中でやっと成果に現れるようになり、この成果をテコにして新たな人に関心をいただけるPublic Relationsが築ける。この繰り返しで、少しずつ10XやStailerを知ってもらう機会が増えてきているかなと感じます。
 
僕自身は自分がオーナーではない会社に雇われる、という経験を5年ほど経て起業しています。このときは「会社と自分のベクトル」に対してとても敏感だったと感じています。ベクトルが重なっているときほど強い馬力が発揮でき、逆にずれが大きくなるとパフォーマンスが出なくなる。ムラの大きい人間で、大変に雇いにくい存在だったと自覚しています。
 
だからこそ「会社と個人の関係性」というのはとても重要なアジェンダだと認識し、できるだけ経営にも反映するように努めたいと考えています。
 

理想の関係性とは

あくまで会社は「事業を通じて社会的・財務的なリターンを得る」ことを目的とした箱です。会社は事業的ゴールが最優先であるべきで、そこへリソースを配分して速度をもって進みます(= ベクトル)。このベクトルは様々な要因に晒され、時に非連続に変化することが宿命となっています。この変化を拒む会社がどうなるか、というのはこの駄文を読んでいただいている皆さんの目には明らかでしょう。
 
他方で、会社のベクトルと同じように、個人も環境が変わったり絶えず変化に晒され続けます。
自分の場合は、地震で被災する、結婚、子供が産まれる、第2子が生まれる、起業する、といったポイントが「個人的な非連続な変化点」でした。この変化点では価値観の変容が求められ、それに応じる形で(最も貴重な資産である) 時間の使い方を変えたり、学ぶ対象を変えたり、付き合う人を変えたりするなどのアクションを要してきました。
自身の場合は年々そういったことが起きるということを覚悟しつつ、ある種それを楽しんでいるところもあります。
 
この両者の関係の中では会社が目指す方向に共感できたり、自分が行きたい方向と合っている、ということが理想だと考えています。会社のベクトルと個人のベクトルが折り合うと一緒に仕事をすると楽しい、成果を自分の幸福度とリンクできる。そういった状態が築けます。いわゆるビジョンやミッション、バリューへの共感度が高い状態です。
 
他方で問題なのは、ベクトルが揃っていたのに変化によって外れてしまうケースです。会社は変化するし個人も変化する。その揺らぎの中で重なり合わないタイミングは必ず訪れます。それは創業者である起業家や経営者であってもありえるのです。以下のSmartHR宮田さんとのPodcastはこの点で非常に示唆に富みます。
 
 
会社の誰とでも強い関係性が構築できるとき、つまり会社が小さい時はその揺らぎは少なかったり、その揺らぎをしっかり説明できたりお互い納得できたりする機会を持つことは用意です。しかし事業が深く刺さった会社はそのゆとりが許されなくなります。お互いのボラティリティは大きくなり、個人の波長と合わなくなるケースは起きやすくなるでしょう。

本当の長期的な関係

会社としては長く一緒に働いてくれるメンバーは本当にありがたいです。こういった関係性をたくさん築きたいと思う反面、「そうではないケース」はダメなのかというと全くそう思いません。
 
一度は共感を元に同じ船に乗った仲間が、どこかで袂を分かち別の道を進んだとしてもそれがお互いにとってハッピーな選択肢であればむしろ推奨すべきだと考えています。そしてお互いが変わり続ける中で、結果的にまたどこかで合流することだってあるでしょう。一度は深い価値観で共鳴した間柄なのですから。
 
会社はあくまで機会を提供する器です。その器を選ぶ個人の目線からすると、そこに自分が上手くフィットするかどうかという一点をひたすらエゴイスティックに考えて良いんじゃないかなとすら思っています。自分がそうだったように。
 
10Xは幸いにも創業以来約4年間、退職者がまだ一人もいません。採用にじっくりと時間をかけてお互いを理解した上で入社してもらう、ということを徹底していることが大きな要因の一つだとは思います。しかし変化は大きい会社であり、今後かならず退職者が出ることはあると思います。
 
そういう時にも「今は合わなかったかもしれないけど、一度はバリューのフィットを確認して一緒の船に乗ってくれたことを感謝しています。タイミングがあったら、10Xでまた一緒に仕事できる機会があると嬉しいです。」と伝えたいと思っています。それが本当の意味での長期的な関係ではないでしょうか。
 
会社と個人、お互いが社会のイシューに対して最もベストを尽くす個体です。お互いが折り合った時に、10Xのテーマに対して、強いパフォーマンスが出せることを期待しています。

なぜこれを書いたのか


Stailerという事業の進みの速さが自分たちの想像を超え始めていると感じています。この速度に必死についていけるように、会社組織の中身も大きな変化の最中です。
 
僕は根本的に小さい人間です。一人新たなメンバーを加える度に「組織が変わること」に強く自覚的なところがあります。
 
「気持ちよく働いてくれるだろうか」「会社のキャッシュフローは大丈夫だろうか」「組織の健康度を高く保ち続けられるだろうか」「重要な価値観を拡大発展できるだろうか」と考えるわけです。新しい人と仕事ができるワクワクと同時に、不安な思いもあります。そんな不安に対しても、改めて自分のスタンスを忘れず、アンカリングする文章として筆を執りました。
 
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10X 採用情報
私たちは今、Stailerを通じて「すべての人の買い物体験を10xする」ことを目指しています。誰もが日常的に利用するお店での買い物体験や、小売の現場でお客様を365日支える方々の仕事体験。「買い物」をとりまく体験を、プロダクトの力で理想の姿にしていくのがStailer事業です。
もっと便利で、もっと多様な購買体験に、日本中の誰もが当たり前にアクセスできる社会を目指して。私たちの仕事は、私たちが大切にしたい誰かの生活と確かにつながっています。
この機会を形にしていくため、各種ポジションで絶賛採用中です。 カジュアル面談や、オープンオフィスの機会もありますのでご関心いただいた方はぜひお話しましょう。