CEO/組織 360°レビューを受けました #2 (2021/03)
半年毎にCEO/組織に対して全メンバーからの360°レビューを実施しており、今期もその内容をとりまとめ公開します。この取組は株主であるDCM Venturesにアンケート設計・個別インタビュー・フィードバックレポート化まで委託してお願いしており、前回の満足度が高いため継続的に実施をしています。
以下はちょうど半年前に受けた360°レビューの内容は以下になります。調査設計やフローは前期を踏襲しています。
前期のフィードバックから、以下の3点をCEOのコミットメントとして表明し、実行したのがこの半期でした。
- ミッションの意図・背景をより明示化して伝達する
- 「inclusivityとは・そこにあるイシューは」を定義し、「自律」と両立させる状態を作ること
- CEO個人に足りない部分を補えるチームをつくること
上記の取り組みを含むCEO/組織のこの半期の取り組みに対し、「メンバーからどう見えたのか」をアンケート及びインタビューを通じて吸い上げ、抽象化してフィードバックを受けました。
今回のフィードバック・サマリ
今回のフィードバックレポートについては以下でまとめて閲覧できます。
https://speakerdeck.com/yamotty/zu-zhi-360-degrees-huidobatukurepoto
以下がサマリとなります。
この6項目について詳細にブレークダウンし、自身の考察とともに記載します。
1/ バリューの徹底・CEO信頼面は高く評価されている
この点については前回から引き続き高い水準でキープできているとのことで、今後の組織拡大時にも最も大事にしたいポイントです。
特にこの半期は「a.プロダクト・セントリックさを保ちながらb.非連続性をリードするBizDev組織の構築」と向き合ってきました。
ここは第一人者でもあるラクスルCOO福島さんに何度か壁打ちさせていただいたことで、「矢本が創るべきBizDev組織像」が浮かび上がり、採用・オンボーディングプロセスに反映されたと思っています。自身の役割もかなりシャープに定義でき、移譲・育成が進み、チームは3名から8名(内定者込)の”組織”になってきました。
個人として「圧倒的なコミットメントでやっていく」のは変わらずです。この半期で1歩進み、目指す高さは100歩分高くなりました。いまだ1%です。皆にはメリハリを付けて休んでほしいけど、自分が休みを取れる・取りたいと思う日はまだ先のようです。やっていくぞ 🔥
2/ 前回のアクションによる組織の強化は着実に進んだ
目指すべき方向性を様々な手段で共通化した、というのは大きな進歩だったと思います。他方で「巻き込み」の部分は人数の増加によって課題感の声があがっていたのは認識していました。
この4月に初めての試みとなる全社オフサイトを実施したのはこれに対するソリューションを模索した結果です。
インクルーシブネスへの取り組みは一歩目をスタートできた
「インクルーシブネス」という前回の課題に対してはコミットメントの通り、大きく施策をうちました。
特にD&Iポリシーはパッションを持つりっちゃとWhyから内外を巻き込んで議論ができ、現段階で10Xらしい、納得のいくものが創れたと思います。松尾さんの加入とEXチームの組成によって入社・オンボーディング・メンタリング・評価と「これまでになかったピープルディベロップメントの仕組み」がスタートしました。長期で安心して働いてもらえるための福利厚生「10X Benefits」も一気に整備したところです。
とはいえこれらの取り組みはすべて一歩目を踏み出したにすぎません。会社というプロダクトの進化はこれからも引き続きやっていきたいと思います。
権限移譲が順調に進捗
権限移譲については「それだけ」を考えても、答えには到達できない無意味なものだと思っています。より複合的な条件を整理して考えたいといつも思っています。
どういう事業を将来構築すべきか、そのために「今」どういうチームを組成すべきか、その中で最も難しく・不確実で・非連続な役割はなにか。そして理想に対し現実とのギャップはどうか。これらを勘案してCEOの役割を定め、権限をチームにアロケートする必要があります。
この観点から、今期は「創るものを煮詰めていく」フェーズにあるプロダクトマネジメントはほぼすべて手放し、採用広報のレバレッジ(アイドル活動)、事業機会最大化を支えるBizDevチームや、10X Values発揮の最大化を支えるEXチームの組成、PRを最大限活用したペネトレーション、そして業界のトップマネジメント・グリップにかなりフォーカスしました(それでも多い)。
この過程で自分が行っていたかなりの仕事をハンドオフする必要があり、自分が行ってきた仕事とミッションを型化して渡し、落としてはいけない品質にだけレビューを入れるという形に変化しました。10Xにとっては権限移譲のWhy nowとなる「組織の成長」「事業機会の成長」が揃ったため大きく進めることができました。
権限移譲は自分がしようと思っていても、それが受けきれるチームを創れないと無理なものです。その点でチームができたことが一番の会社の成長だと感じています。
プロダクトフィードバックの影響度は力点が変わった
上記の背景から、メンバーは「プロダクトのHowについて矢本が言及する機会」が過去と比べて大きく減ったと感じていると思います。
確かに機能、UI、文言、マージンなどの細かなQAは背中を合わせるようになりました(逆にここはチームにやりきってもらいたいという期待値です)。しかし自分の視点からはプロダクトフィードバックが弱くなったとは思っておらず、むしろより大きくなったと思っています。
Stailerはパートナーの経営・お客様と二人三脚で作り上げる事業であり、事業機会の多くはBizDevからスタートします。
経営・現場の往復で見えてくる「小売産業を10xするために必要なプロダクト像」を具体化し、Stailerのプロダクトはどこを目指すべきか(Why)、何を揃えるべきか(What)という観点でプロダクト戦略にフィードバックをかける役割の重みがより増しています。同時にこの観点をもち、プロダクトとパートナーの双方にうまくフィードバックを与えられるBizDevチームを創る、というのも大きなアジェンダです。
あくまで「プロダクトセントリックな自分の特性を使う場所を変えた」というのが自分の視点から見た景色で、現状の最適解だと思っています。これも矢本個人に閉じた話ではなく、チームありきの話です。よりスケールするプロダクトチームの構築のために、フェーズにあわせて細やかに変化させていきましょう。
3/ 事業機会の非連続な増加に対し、組織スループットの拡大が急務
今期はBizDevのペネトレーションが非連続に進みました。パイプラインの数は数倍に膨れ上がり、それに伴い事業立ち上げに必要なプロダクト開発のイシューが明確になっています。
採用・型化・育成と3つの観点でコメントを整理してもらいましたが、最終的なゴールは組織のスループットの成長を事業機会の成長速度に比例させること、です。先の3つは手段ではあるものの、目的ではないことは改めて強調したいと思います。その上で、もちろん3つとも重要なイシューだとは思います。大事なのは順序で、今のところは以下のように考えています。
- プロダクトのモジュール化がより進めば、事業立ち上げのプロトコルが整理される(型化)
- スキル依存度や時間プレッシャーの低下により新しい人でもエントリーしやすくなる(育成機会)
- 大きなイシューから小さいイシューまで、機会の括り出しがしやすく、採用の幅が広がる(採用)
すべて時間がかかるために現段階から種まきしていくものですが、会社としての優先度は上記であることを共通認識としてピン留めできればと思っています。どれもチームで取り組んでいきましょう。
…というのが「会社全体の総論」であり、各論としては、多くのコメントの通り機会に対しプロダクトの準備が追いついていないというのが実態です。特にプロダクトチームのスループットを10xする必要があり、会社にとって最重要アジェンダと捉えています。より加速させていきましょう。
4/ 拡大に備えた情報管理基盤の整備
フィードバックでは「コンプライアンス(法令遵守)」という言葉が使われていますが、本質的イシューはコンプラより「事業に求められる適切な情報管理体制の整備」であると捉えており、これについては2020年末から「急務」として取り組みを開始していています。
まずはStailer上で扱う個人情報、そしてパートナーの機密情報、プロダクトの統計情報、パートナーへの提案情報といった各種情報に求められるセキュリティレベルを区分けし、このレベルに応じた情報管理が可能な体制を構築する必要があると考えています。
1足飛びにすべてを揃えることはできないため、現在は「1wayのミスが発生し得ない状態の構築」をミニマムとし、優先度をつけて整備を進めていきたいです。これは仕組みと個々の努力によって成立するものも多いでしょう。一緒に「世の中の器に適格な管理状態」を作っていきましょう。
5/ よりメンバーから潜在的な力を引き出す機会
「チャレンジング・150%・ストレッチ」という言葉が並びました。個々の意欲が感じられ嬉しいのに加えて、「150%のストレッチのために必要なことは何か」はよくよく考える必要があると思います。
私見では「個人・機会の適切なマッチングの積み重ね」以外にないと思っています。極端なたとえですが、一切の適切なスキルや経験を持たない人に、「Stailerをイチから作り直して」「30億円をベストの資本構成でファイナンスして」とオーダーをしたとして、成果を出すことも難しければ、個人として150%のストレッチをすることも難しいと思います。
つまり「自分の身の丈よりも少しだけストレッチした機会と達成の連続」によってチャレンジの幅を広げていく必要があります。これに対し、CEOとしては「個々に適した機会のアロケーション」に徹していきたいと思っています。
別の視点で、現在は「事業の成長速度が個々の成長速度よりも遥かに早い」という危機感のあるフェーズです。10X全体のスループットが最優先という大前提の元、「会社に転がるイシューから自分に適切な機会を括りだし、それによって10Xのスループットを飛躍させ、自らも成長させる」というスタンスが一人ひとりに依然として求められていると考えています。
6/ 外の刺激が足りない?
このフィードバックについてはあまりピンときませんでした。この半年、おそらく国内でも相当量のトップチェーン経営陣とBizDevを行ったと思います。また先のフェーズのスタートアップ経営者との対話も行いましたが、これらが「CEOの視座の向上」に役立ったかと言うとNoです。
4年のCEO経験を振り返っても、視座を非連続に高めるのは「血が通ったより社会的影響度の大きい意思決定の機会」以外にありません。そのための土台となる事業成長・組織成長が今の自分に必要なことだと思います。
なので、昨年末に描いた中経は、今のチームで5年じゃなく1年で実現させ、その先にすでに描いている非連続なチャレンジがしたいと思っています。頼りにしています。
7/ その他サーベイ記述内容
このあたりは半年前とほとんど同じ印象があります。非連続と実直が自分らしさなんでしょうか。
総括とネクストアクション
大きく3つです。
- 前期レビュー後に掲げた3つコミットメント(ゴール明示化・Inclusiveness・チーム組成)に対しては、組織としても一定の成果を感じており、ベクトルを強化していくフェーズに入る。
- 現行の全体の課題感は「プロダクトチームの強化とスケール」に大きく集約され、全社としてNo.1 Priorityとして取り組みを見直す必要がある。
- CEOとしてのネクストアクションとしては、「より個々と機会のアロケーションを最適化し、機会提供を最大化できるような組織」を模索していくこと。
この3つを次の半期のコミットメントとして、またフルスロットルで取り組んでいきたいと思います。