生活拠点を一時的に地方へ移した話
2021/8より、家族全員で実家のある青森へ一時的に生活拠点を移しました。自分とパートナーは必要なタイミングで東京近郊へ「出張のように通う」という生活をしています。
長男は夏休み明けの小学校は休業状態となったため祖母(元・小学校教師)のサポートを得ながらリモートで学習を進め、次男は保育園を休んで実家の中や周りを走り回っています。
この記事では「働き盛りの共働き世帯」でありながらこういった意思決定をした背景や、その結果私達の身の回りに起きたことを記載しています。
特に昨今の情勢における「安全の確保」・「子育て」・「仕事」という3つの間で葛藤に悩まれる方にとって、少しでも良い材料になればと思い筆を執っています。
意思決定の背景
紛れもなく新型コロナウイルスの猛威によるものです。特に子供の安全を確保したい、というイシューを重視しました。背景として以下の社会的情勢が挙げられます。
- 教育/育児社会における急激な感染増加 (ref. 各区報道より 例.北区)
- 日本において子供がワクチンを接種できる見通しが立たない
- 万が一の際の入院不可能性 (確保ベッド数 << 入院調整患者数 ref Stopcovid19)
- 重症者医療の不足 ( ref. NPO法人日本ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計)
- 加えて両親、パートナー、自身がFully vacctinatedであった
経緯
この意思決定をしたのは長男が通う小学校の夏休み期間中でしたが、私達の身の回りの環境としては以下のようなものでした。
- 小学校は夏休みにも関わらず、クラブ活動や学童によって毎日のように検査陽性者通知が届くため、学童の利用を控えるようになっていました
- 保育園でも毎週のように検査陽性者の報告があり、いつ休園となるかわからない状況。次男の登園を控えることも増えていました(園の指針については園長先生からのメッセージを頂き、震えるほどの覚悟へリスペクトを感じました)
- 必然的に自宅に子供がいる時間が多くなるが、私もパートナーも仕事があるため、お互いに満足の行く時間が過ごせずストレスが増えていました
- 家の中で子供が少し騒ぐとマンション内から苦情が届き、この件にも強く悩まされていました
これらより、「子供の身を守りつつ、家族全体のストレスを減らせる環境」を模索しはじめたのがきっかけとなります。またこれと並行して「妹の結婚式へ出席」というイベントが有ったことも検討の契機となりました。
具体的に実施したこと
拠点の移動に当たり、具体的には以下のような流れで実施をしました。
実家があるエリアの状況調査
背景にあるようなイシューが本当に解決できるのか、移動前に入念に調査をしました。
特に以下を確認したことで安心と同時にウイルスを絶対に持ち込んではいけないという緊張感を得ました。
- 東京比で、人口あたりの検査陽性者数が極めて少ないこと (0名~数名/day)
- 医療キャパシティが東京比10x~ ほど良い数値 (≒ 余裕がある) であること
両親と意向の確認
実家の両親と万が一のリスクをふまえた意思確認を行いました。
2年近く孫と会えていないという寂しさもあったとは思いますが、「あなた達が仮にウイルスを持ち込んで、自分たちに何かがあったとしても本望だ」と伝えてもらったことが、最終的な意思決定の後押しになったことは事実です。
小学校への方針確認
夏休み明け後の運営状況がどうなるのか方針が示されていなかったこともあり、小学校へ方針の確認を行いました。回答は以下のようなものでした。
- 学校側も区や教育委員会から前年のような休校・分散登校の方針が示されるのではないかと考えているが、今の所連絡がない (その後夏休み終了前日に連絡があったとのことで非常に大変そうでした…)
- 感染症対策でお休みする場合は、欠席ではなく出席停止扱いとする
- 休校中は配布済のタブレット端末を利用してGoogle Meetでのオンライン授業等を実施予定
この回答を得た上で拠点移動の意思決定が可能なものだと確認する事ができました。息子が通っているのは区立小学校ですが、区や学校によって方針は異なるようです。
移動
出張の関係から、子供+パートナー、自分はそれぞれ別の日に飛行機を使って移動を行いました。ちょうど休暇シーズンでしたが、空席が目立っていたのが印象的でした。
隔離と生活の整備
移動後は家族以外との接触を避けて生活しています。
それでも公園はデフォルトで誰も人がいなかったり、移動はほぼすべてが自家用車のため安心して生活できでいます。私とパートナーは新拠点でのリモートワークや生活を円滑にするための物品を購入するなどして生活の整備をしました。
得られた変化
生活には以下のような変化がありました。多くが非常にポジティブであると考えています。
- ○ 仕事中はどうしても子供の要求に対応できない事が多く、YouTubeやゲームに頼っていました。こちらでは外遊び、虫探し、海遊び、ドライブ、花火などに置き換えられ、デジタルデトックスが急速に進みました
- ○ 小学校のリモート授業も始まり、長男はうまく適応し始めています
- ○ 次男はストレスが溜まると足で床を踏みつける癖があったのですが、こちらへ来てから一度も見ていません
- ○ 私とパートナーの予定が被っても、祖父母が対応してくれる心理的安全性が得られました
- ○ 家事の負担が大きく減り、また仕事をより朝にするなどの調整によって自身のストレスが減りました。集中して仕事に取り組める時間が増えました
- △ 保育園をお休みしている次男はお友達や先生たちとの交流から分断されており、大きな懸念です。多感な時期の過ごし方として本当に正しいのかという悩みについて、答えが出ません
- △ 田舎での自由が多い環境に慣れつつ有る子どもたちが、東京での成約やストレスが多い生活に戻れるのかという懸念も感じ始めています
- ✗ 私とパートナーが月に数度、東京と往復する際にかかってくるコストが重たいです
ref. 仕事への影響
ちなみに、この家庭内での大きな意思決定と並行して、経営する10Xでも類似した指針を明示化しました。「家族の安全を第一として、業務へ取り組む環境を選択可能にする」という私個人が感じたイシューを「誰にでも再現性が有る全社イシュー」として捉え直し、指針としたものです。
具体的には9/1 ~ 12/31までの期間をリモートベースの働き方へ変更し、個人の選択に対して会社として可能なサポートは最大限実施することにしました。
社内向け方針ドキュメントの一部 (10Xで運用するNotionより抜粋)
指針のドラフト策定から数日後には具体的な論点の潰しこみや運用までのロジが設計完了しており、コーポレートチームの素晴らしいパフォーマンスを実感する出来事となりました。
今後について
この拠点の変更について、終了条件をパートナーと話し合っています。具体的には特に子供の安全面を最大限重視し、以下を満たせるタイミングとしています。
- 特に教育・保育におけるリスクコントロールが可能だと感じられること
- 万が一の際に入院可能性が確保できること
東京の現状を見ると、なかなかすぐに拠点を東京へ戻すという選択肢が取りづらいのが実態です。一方で、現在はこの家庭方針をTemporaryとしていますが、長期的な方針とする可能性も話し合っています。
私自身が田舎育ちであり、東京がもつ「子供が出会える人の多様性」を強く評価しすぎているフシがあります。こういった東京のメリットを認識しつつも、この多感な幼児・小児期における地方での生活は多くの点でポジティブだと再認識させられました。
家族と社会の変化をよく観察しながら慎重に検討を進めているところですが、パンデミックによってこうしたOut of the boxが生まれたこと自体は不幸中の幸いでした。
自分がこういった選択肢を検討できる事自体が非常に恵まれたことであり、またすべての人に推奨できるものではないと理解しています。ただ一人の親として、生活者として、家族と自分のために今取れるベストはなにかと考え続けています。