10Xと私 -2021年-

2021年もあっという間でした。今年の後半は10X社を取り巻く状況が大きく変化し、その対応に追われるうちに年末を迎えてしまった、という大きな反省があります。
 
経営は「未来を予見し、先手を打ち、課題の発生を予防しながらリターンを高めていく活動」に価値があると感じていますが、その点での自己評価は50点ほどだったかなと思います😂
 
とはいえ、10Xという会社がこの1年でチャレンジしたことは大きく、事業の面のみならず組織の面で大きなアップデートができました。その中身は「これまでの10Xに対する印象」を大きく変えるものになるのではないかなと思います
 
この記事は、CEO目線で10Xの事業・組織の1年を振り返りつつ、 ”これまでの10X” に対して以下のような印象を抱いている方へ向けて、その印象をアップデートしてもらえるような内容を書きたいと思い筆を取りました。
 
  • 10Xは個人主義っぽくて、とっつきづらい印象
  • 10Xはあまり組織やマネジメントを重視していないような印象
  • 私が活躍できる場所ってあるの?
 

1.時間がない人のための3行 - TL;DR


  • 事業のValue Propositionが変わるレベルのアップデートにより、可能性が拡大しました。
  • これを実現するため、「組織」を徹底強化していきます。今年は人員が3倍になりましたが、さらに「多様な個を引き出せる組織マネジメント」こそが、事業を牽引すると考えます。
  • ぜひ新たな10Xで一緒にデカいチャレンジをご一緒しましょう! いろんな方が活躍できるスペースが広がっており、JDの数は急増しています。Jobページをぜひ見てみて!
 
 

2.事業の変化?いや変革


2020年はタベリーからStailerへと事業が大きく変化した1年でしたが、2021年の変化はそれを遥かに超えるものでした。
 
Stailer事業モデルの変化 (TAMの拡大)によってStailerのValue Proposition(バリュープロップ)自体が変革したと考えています。この様子を2020年末と2021年末の対比で見てみましょう。
 

2020年末 - モバイルUX

2020年末時点でのStailerのバリュープロップは以下のようなものでした (なおDCM原さんが書いたValue Propositionについての記事は日本一わかりやすいですよ ※原さんへ、広告費ください) 。
2020年末のStailer Value Proposition
  • 代替手段:なし
  • 顧客:ネットスーパーを既に運営する企業
  • 製品カテゴリー:Go Mobile
  • 提供価値:エンドユーザーへモバイルアプリが短期・低リスクで提供可能
  • 競合製品:その他のモバイルASP
  • 主な機能:サイトコントローラー、マルチテナント・複雑なマスタ管理など特有機能
 

さらに、Stailerの役割をさらに詳細に図式化したものが以下です。
 
既存のシステムをラップしながら正常に動かすサイトコントローラーを整備し続けAPIを模し、モバイルクライアントでの高度なUXを提供するシステムが最もユニークなポイントでした。
モバイルの方は見にくくてすみません
モバイルの方は見にくくてすみません
 
このプロダクト運用にあたってはほぼすべてが10X社内で完結し、主たるユーザーはお客様でした。Stailerの責任領域はお客様サイドに大きく拠っています。
 

2021年末 - Whole product for チェーンストア

1年たった今、Stailerのバリュープロップはどうなったのでしょうか。
 
2021年末のStailer Value Proposition
  • 代替手段:小売基幹システムベンダーが開発するネットスーパーシステム
  • 顧客:すべてのチェーンストア
  • 製品カテゴリー:Go Online
  • 提供価値:オンライン事業の開発・運営に必要なすべてを備えるWhole Product
  • 競合製品:Amazon 3rd Party Grocery, 楽天全国ネットスーパー 等 Tech Giant
  • 主な機能:オペレーティングシステム、顧客UX、外部連携API 等
 
 
この通り、同じ事業内容に見えてもその中身は大きく変化し、別物と言っても過言ではありません。バリュープロップを比較表にしてみるとよく分かるかと思います。
 
Name2020年末 - モバイルUX2021年末 - Whole Product
代替手段なし小売基幹システムベンダーが開発するネットスーパー基幹システム
顧客ネットスーパーを既に運営する企業すべてのチェーンストア
製品カテゴリーGo MobileGo Online
提供価値エンドユーザーへモバイルアプリが短期・低リスクで提供可能オンライン事業の開発・運営に必要なすべてを備えるWhole Product
競合製品その他のモバイルASPAmazon 3rd Party Grocery, 楽天全国スーパー
主な機能サイトコントローラー、マルチテナント・複雑なマスタ管理など特有機能オペレーティングシステム、顧客UX、外部連携API 等
 
そしてStailerの責任領域やユーザーは以下のように、サプライ側全体を覆う形へと急激に拡大しました。パートナーサポートやSCMデザインなどの組織関与も含め、Whole Productと化したのです。
 
モバイルの方は見にくくてすみません #2
モバイルの方は見にくくてすみません #2
 
このためにプロダクトサイズは肌感で4~5xへ拡大・複雑化し、またパートナーへのデプロイや支援をするための事業組織に求められるコミットメントも4~5xへ拡大しました。
 
そしてバリュープロップの変革はもう一つ、10Xへ大きなインパクトを与えました。それは潜在顧客が30~50xしたことです。
 
これまでネットスーパー投資が高リスクすぎて難しかった企業はたくさんいます。全体の3%程度しかGo Onlineはできていませんでした。それがStailerの登場ですべての小売へ開かれたのです。
 
結果として、ローカルSMBから名だたる大企業まで、(今も)絶え間なく問い合わせが相次ぎ、Stailerのパートナー(契約)数も呼応する形で急拡大しました。現在のパートナーはほとんどが数千億円超の売上規模を誇るエンタープライズです。
 
  • 創るもの(機能) が急拡大
  • ステークホルダーとのインターフェースが急拡大
  • パートナーの数が急拡大
  • パートナーを汎用的に対処する抽象化 (プラットフォーム化)ニーズが急増
 
と、同時に発生したのがこの1年です。Stailerは小売業にとって、エンタープライズにとって、「Go Onlineのための基幹」というポジションを登りはじめました。

3.組織トランスフォーム - マトリクス組織への道


こうして事業を振り返ると順調なように見えますが、正直なところ、こうした需要に対して組織構築は完全にビハインドしました。この過程も見てみましょう。
 

2020年末 - 機能型の組織

2020年まで機能していたのは以下のような「機能型の組織」です。部門が機能を表し、機能がミッションを担当するため、事業と組織のアラインがわかりやすかったと思います。人数も15名程度と少なかったため、別の部門とのコラボレーションは個人に託すか、一時的なプロジェクトを組成すれば十分でした。チームは十分ワークできていました。
 
これが2021年秋にはこうなります、ドン。
 
もはや読めません。
 

2021年期中のハレーション

事業の必要性に合わせて会社の機能(部門)はタテにもヨコにも大きくなりましたが、この肥大した「部門」の間を「一時的なプロジェクト」によってコラボレーションさせ、事業のリズムをつくっていく組織構造は限界を迎えることになります。
 
  • プロジェクトに対し常にアサインが足りないためデリバリーに追われる
  • プロセスや知見が蓄積されず、個人にフィードバックがかかる
  • パーマネントなリソースがなく、中長期で成果を出すべきことが犠牲になりやすい
 
結果として全社の根幹を見直さざるを得ないハレーション発生し、構造変革の必要に迫られました。本来では経営が予期して、事前に手を打つべきイシューですが恥ずかしながら自分の意思決定は完全にディレイ。
 
この遅れは社内外への負担に繋がってしまい、本当に申し訳なかったと感じています。
 

2021年末 - マトリクス型組織

ハレーション以降、「社内との対話・組織戦略のリサーチ・小さな組織での実験」を重ねて、以下の3点のイシューがクリアになりました。
 
  1. 事業ミッションに対して、事業組織の構造を一致させる
  1. チーム内でパーマネントなリソース確保と中長期の取り組みを可能にする
  1. チーム内でのプロセス(型)の構築・改善を推進する
 
そして浮かび上がったのが「乱立するプロジェクトをやめ、5つのミッションチームへリファクタリング。重複なしのアサインをする」というものでした。いわゆる マトリクス型組織への移行です。
 
イメージです。
イメージです。
 
ミッションチームが固定されることで、チーム内でプロセスを磨いたり、チーム内のマイルストンに集中しやすくなることが期待されます。
 
そしてこの体制移行においては組織イシューへの対処も同時に期待しています。
  • プロセスが型化でき、役割分担がしやすくなる、未経験者採用がしやすくなる
  • ミッションに必要な役割が分化し、専門性/関心の高さを評価しやすくなる
 
このあたりの詳細は以下の3本のPodcastで社内メンバーを招いて話しているので、ぜひご関心ある方は年末年始に聴いてみてください。

4.では2022年は平穏ですか? - いえ全然


だいぶ長くなってきたのでまとめに入っていきます。
 
ここまでを読むと、「なるほど、Stailerは事業が広がって組織もつくった。では心安らかに事業を伸ばすのみですね」などと思われるかもしれませんが、全くそんな事はありません。
 
一例を挙げます。以下はネットスーパーの事業モデル(行・5型)サプライモデル(列・6型)のマトリクスです。
モバイルの方は見にくくてすみません #3
モバイルの方は見にくくてすみません #3
 
見ての通りStailerはまだそのうちのほんの一部しかカバーできていません。そして来年のチャレンジはすでに動き始めており、対応範囲を上、左へと広げていきます。
 
特にCenterとStoreは事業自体が別物と呼べるレベルで違います。しかし「オンラインで食品を買う」という市場を成長させ続けるために、確実に10Xにとって血肉にすべき存在です。そんな非連続なチャレンジにも十分に対応できるだけの多様なメンバーが揃いつつあります。
 
ほんの一部ですが、勇者たちの顔ぶれを見てみてください。
鰻を囲むビジネスサイドの勇者たち
鰻を囲むビジネスサイドの勇者たち
脚色不要、本当に素晴らしい酒好きのSWE&SREの勇者たち
脚色不要、本当に素晴らしい酒好きのSWE&SREの勇者たち
 
 
Stailerを初めてはや1年半。
 
この1年半で成し遂げたこと以上に、「やらねばならない」というボリュームが増え続けることを実感する毎日です。危機感を感じることしばしばあります。ただ1年に何度か、大きな節目に感激できる仕事です。そして何より、誰にでも胸を張れる事業です。
 
10Xは一人の難題のために、非連続な価値を目指して、巨大な市場に腕をまくって取り組んでいく集団です。その前線は広がり続けており、特にこの半年は毎日のように新しいポジションが生まれ、新しい関わり方が生まれ、会社により大きなダイナミズムを感じることが多くなりました。
 
2022年はこの1年でつけた火を更に大きくしないといけません。10Xの遅れは、市場の遅れ、そしてエンドユーザー体験の遅れになります。
 
計画上も来年には確実に100名を超え、より ”会社” として器を広げることになります。創業者としてのチャレンジも当然にあります。ただこの事業は数十年先の当たり前を創るため、遥か未来へ向けて創っています。
 
今年も未だ到達点は0.1%。毎年が一歩目の心地です。その一歩目を一緒に創りませんか。
年末年始の時間に、少しでも10Xのことを知ってくれたら幸いです。興味が湧いたら、私でも会社の誰かでも、何かのフォームでも構いません。お話しましょう!
 
それでは、良いお年を。