誠実さとはなにか

私の経営している10Xでは年に4回全社オフサイトなる催しがあります。普段は別々の背景、別々の場所、別々のミッションで仕事をしているすべてのメンバーをつないでいく大事な場になっています。
 
10月に実施したオフサイトで経営パネルディスカッションなるものがあり、「会社の自慢できるところはなんですか?」という質問に私は「誠実さ」と即答しました。
 
誠実さを別の言葉で言い表すと「嘘をつかない」と表現したのですが、どうも自分的にはしっくりきませんでした。
 
後日、誠実さを突き詰めると自分以外の誰かの世界に対しても、自身の世界と同様に真摯であると言えるのではないかと思えてきました。そしてその正体は「想像力」だと思っています。先程の「嘘をつかない」というのはこの態度に必要な一つの要素と捉える事ができます。
 
「嘘をつかない」というのは「交渉可能である」とも言えます。
 
ロシアが今年の2月にウクライナへ侵攻するほんの数日前、ロシア外交は「侵攻はない」というメッセージを発していました。その後起きたことは誰もが知るところです。これに限らず、ロシアの戦争に対する態度というのは常に「嘘すら戦術」というスタンスで一貫しています。
 
知性ある世界下での戦争は「なんでもあり」ではなく、一般市民を攻撃してはいけない、医療施設を攻撃してはいけないと言った一定の人道的約束を下敷きに、あくまで外交手段して行われるものです。ロシアの「嘘常套」という態度はウクライナや西側諸国にとって交渉を不可能にさせ、現状の苦しさにつながっているのだと思います。
 
どんな世界にもそれぞれの正義があることは認めますが、それぞれの世界を交わらせるのは「交渉」であり、交渉という場を殺すのは「嘘」であると思います。
 
翻って、10Xのメンバーは全員が誰とでも交渉可能な人々であると感じます。自分の世界と同じくらい、10Xがもつ世界や、他のメンバー、採用候補者、パートナー企業といったステークホルダーのもつ世界に対する真摯な態度があります。これが私が誠実さと感じるものです。
 
こういった態度は自らが感じた嬉しさや痛みの先に、他人の嬉しさや痛みを想像できることに支えられていると思います。パートナーやお客様の困りごとを解決する、社員の喜びを増やす方法を考える、市場と対峙して投資家と自分たちのゴールを揃える…いろんな働き方が10Xのなかには存在しますが、自分の心身使って、他人を想うことが、私を含むみんなの誠実さの根源ではないかと思うのです。
 
そしてもう一つ。自分の世界を大事にするということも誠実さだと捉えています。自分に嘘をつかないということ、そして自分のスタンスを持ちそれを大事にする、発言するということではないかと思います。
 
10Xにはコアとなる価値観としてミッションや10X Valuesといったものがあります。これらはときにカルチャーとも言われたりしますが、「誠実さ」は10Xの重要で確かに存在するカルチャーだと確信します。カルチャーには言語化されているものが1%、されていないものが99%です。誠実さはこれまでは99%の側だったかもしれません。
 
明言されているものではないものの、ミッションや10X Valuesと並んで未来永劫この会社の幹として残っていってほしいカルチャーであるとも思います。そして10Xにはすでにカルチャーを専任する部が存在し、役員がいます。早期にこの決断ができ、全社的に肯定される10Xは自分にとっての誇りもあります。