AIはインプットを増やしてはくれない

情報を吸収する上で最も効果的な方法は、アウトプットすることだと思う。
 
読んだり・聞いたり・見たりした情報をそのままにしておいても、それは単なる知識の断片でしかない。誰かに話したり、文章に書き起こしたりすることで、初めてその情報は整理され、思考の一部に取り込まれる。
 
現代は、より一層情報のインプット量が重要視される傾向がある。しかし、本当にインプットを増やしたいのであれば、ボトルネックは「どれだけの情報に触れたか」ではなく、「どれだけの内容を自分で書き出したか (話したか)」にあるのではないだろうか。
 
AI時代の到来により、この状況はさらに複雑になっている。
 
Deep ResearchのようなAIエージェントは、これまでにない量の情報を瞬時に処理し、エッセンスを抽出してくれる。触れる情報量を爆発的に増やすツールだ。しかし、もはや触れる情報量を増やしたところで、本質的にインプットは増えていないことに気づく。
 
なぜなら、アウトプットを伴わない情報は、一時的な・断片的な知識としかならない。逆に、実際に文章に書き起こした内容は、驚くほど記憶に残る。例えば、スーパーマーケットの未来についてのホワイトペーパーを執筆した際、その内容は構造化された知識として私の頭の中にしっかりと定着した。
 
AIは確かに便利なツールだが、それは必ずしも自分の能力の拡張にはならない。特に、創造的な仕事や、独自の視点を磨きたい場合、AIへの過度な依存は諸刃の剣となる可能性がある。
 
真の学習と成長のためには、情報の量ではなく、それをどれだけ自分の言葉で表現し、思考を深めていくかが重要だと思う。この本質的な原則は変わらない。