10Xが創る次のステージ

本稿ではStailerというプロダクトの最新のストラテジー、そこに対してどういった組織を構築していこうとしているか、どういう人と一緒に働きたいかということを伝えたいと思います。
以下のPodcast「Zero Topic #68 Stailerの事業と組織のストラテジー、そこに求められる人物像」をベースにしつつ、アップデートを書き起こしています。
 

Stailerのエントリーポイント

6月にリリースしたStailer(ステイラー)は現在、イトーヨーカドー(セブン&アイ・ホールディングス傘下)に導入いただいています。
イトーヨーカドーは2001年に葛西店でのネットスーパー「アイワイネット」の開設以降、19年の歴史をもつ事業です。「ネットスーパー事業単体で事業化する」というスコープでスタートしたものではなく、あくまで「店舗の提供する1サービス」という位置づけでスタートしました。故にお店が無理をしながらもユーザーのニーズに応え続けてきた背景があります。
アイワイネットは国内トップシェアを誇るものの、供給力以上に需要は強く、市場の拡大に追いついていないことが課題でした。供給力やソフトウェアなどのボトルネックを克服し現代のユースケースに最適化されたUXを実現すること。
このイシューを解決する初手としてユーザーフレンドリーなイトーヨーカドー ネットスーパーアプリをリリースしたのがStailerのエントリーとなりました。
このアプリでは、既にあるイトーヨーカドーのネットスーパーのWebサイトや管理システム自体には一切の手を加えず、外部から商品を管理するマスタのシステムや、商品をカートに追加するAPIなどを開発することで、非常に使い勝手の良く・更に高速で進化するネットスーパーアプリをイトーヨーカドー名義で提供するという離れ業をやってのけています。
 
イトーヨーカドー ネットスーパーアプリはスタートして以降、コアなユーザーや若い新規ユーザーへ浸透しはじめ、リリースから2ヶ月ほどで数千件/dayのオーダーをいただき、かつ高い継続率をマークするようになってきました(2020年8月現在)。
スタートアップがSCMの構築からスクラッチでこの規模を目指す、あるいは大手企業が新たにチャネルを拡大する、いずれのケースでも年単位の時間がかかります。その点、10X・イトーヨーカドーの両者に共通する「10xな顧客体験や事業成長を達成する」という目的に向けて大きくショートカットができています。

SCMにとってもベストプロダクトへ

他方で、Stailerのゴールは一社の成功ではなく、小売・流通のユーザー体験を10xすることです。
スーパーマーケットでの顧客体験を考えてみてください。現在は99%のユーザーが店舗に行って、30分以上の時間を費やして商品を選び、カートに詰めこんで行列に並んで決済し、パッキングして20分かけて家まで移動する…という大変なタスクを週に数回という頻度で行っています。
10Xとしてはこの「不可欠で頻度が高くペインが深い営み」がオンラインに替わっていく未来に賭けています。「店舗を中心とし、数万のSKUを、様々な温度帯で扱う事業者」がネットスーパーのような事業を始めるためのボトルネックを取り除くことに、Stailerという事業の本質的な目的があります。
 
この背景から、StailerのプロダクトとしてはUXサイドだけではなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)をいかにデジタライズして効率化するかというイシュー* に全力で向き合っています。このSCMに対して市場で圧倒的なシェアを持つプロダクトの一つにキーエンス社のハンディなどがありますが、Stailerはこれを超えるベストプロダクトにできると確信しています。なかなか一般の人に見せるものにはならないと思いますが…
※ 以前自社でSCMを構築してネットスーパー事業を行う実験(タベクル)も実施しており、このイシューにはすでに2年近いアプローチをし続けています。これらの内容は私のブログの「タべリーからStailerへ」という記事で詳細を説明していますので、是非読んでみてください。

BizDevとプロダクトの甘い関係

10Xは20人にも満たない小さな会社ではありますが、リリース後は国内各地より60を超えるお問い合わせをいただき、引き合いが止まらない状態となっています。そして1社1社に対して、創業からの沿革をリサーチし、IRを分析し、既存のお客様へのN1インタビューを敢行し、中長期的な理想の姿をしっかりと描いた上でコミュニケーションを行います。プロダクトを売るのではなく、長期で事業を一緒に行うための信頼を築く。これがStailerのBizDevのスタイルだと思っています。
こうした中、UXとSCMをフルセットで導入し、ゼロから垂直にECを開始するプロジェクトもスタートしています。殆どのケースでパートナーにとっては初めてのECチャレンジです。また10Xにとっても、業態、SKUの入れ替え、規模、サイズ、従業員の性質、バックヤードの広さなどSCMプロダクトを構築していく上で考慮しなくてはいけない要素が極めて多い、という発見の毎日です。
パートナーの方々の現場へ実際に訪問し、観察をし、作っては壊し…を繰り返しながら、toCプロダクトを作り上げるようにSCMプロダクトを構築しているところです。
なぜここまでSCMプロダクトが重要なのか。
ネットスーパーはtoCサービスです。toCサービスを運営するということは、常に変化に晒されるユーザーの不確実性を検証し、「事実を確定していく」行為にほかなりません。しかしネットスーパーのようなサプライが大変なプロダクトは、サプライの変更コストの高さに引きずられる形でアジリティを失いやすいのです。10Xはこの現状を解決したいと思い、SCMプロダクトに全力投球しています。
 

どういった組織をつくっていくか

組織は事業に準ずる、という方針のもと、事業を最大化するために大きく4つのファンクションを設けています。
  • エンジニアリング: POSや基幹システムといった店舗運用システムの全貌を把握した上で、ECを立ち上げるためのボトルネックを解決する
  • プロダクト: エンドユーザー・店舗・本部・配送ベンダーと複数のステークホルダーに向けて、それぞれのイシューを解決するベストプロダクトを構築する
  • BizDev: 規模やステージの違うクライアントの経営の方針を深く理解し、経営者や創業者と信頼を構築する
  • グロース: ユーザーや事業を深く理解する。ナレッジをシェアする。事実を確定する。これらを通じてECをパートナーのコア事業として成長させる。
この他、全体の生産性にレバレッジのかかるコーポレートチームを組成し、以下のような40名超の組織図を次の1年ほどで目指しています(現16名)。
 
先に挙げたように、Stailerは各社にとっての事業戦略の描写からECの立上げ、そしてグロースや顧客の理解、フィードバックループを回すところまで、全てのバリューチェーンを伴走します。
バリューチェーンが長い事業においての困難はなんでしょうか。
それは複数のパートナーから得た要件を最も抽象度の高い形でプロダクトに落としこむというプロダクトマネジメント(PM)や、システムとユーザー両面のイシューを同時に解決するUIを構築するデザインエンジニアリング(DE)、パートナーイシューをグロース施策に転換するパートナーサクセス(PS)など、チームを跨ぐ役割にあると思っています。

チームの跨ぎ方

コンテキストを最も理解する矢本・石川がチームを跨ぐボールを担当するケースが多いですが、この役割自体も「明確な役割によって」 +「チームのCapabilityによって」スケールしていく方針をとっています。
中間のボールを前に進めるために特に気をつけているのは、以下の3つです
  1. 明瞭な理想像
  1. 抽象度の高い実装
  1. 破壊的な変更を恐れない
例えばデザインエンジニアリングに関しては石川が中心の役割を担いつつも、小さな変化については各ソフトウェアエンジニア(SWE)が社内のDesign Systemをベースに自律的に構築していくというプロセスをとっています。10Xらしいプロセスでスピードの源泉である一方、単なるUI設計力やシステムだけではなく、チームを跨ぐ情報に全員が感度高くアクセスしているからこそ実現可能な側面があります。
これは先日尊敬するデザインエンジニアであるくれちょん氏に言われたことでもあるのですが、ネットスーパーのような「毎日に近い頻度で使われるペインキラー」という性質のプロダクトには、意匠性や創造性の高さよりも、変化し続けるイシューを解決し続けるアジリティが求められます。複雑なイシューを複雑なまま解決する実態の裏には「チームを跨ぐ」という重要な役割が寄与していると気付かされました。
10Xはプロダクトセントリックな組織です。今後もエンジニアリングおよびプロダクトチームは社内の過半を占める状態が続くでしょう。現在は10名のSWEが在籍していますが、近く20-30名体制にしたいと考えています。このチーム全体のスループットを最大化するためにも、チームを跨ぐ役割の重要度が増していくと考えており、新たなポジションの創設にもつながっています。
 

バリュー発揮を最大化したい - グレード制度

組織のパフォーマンスを司るものには、設計(組織図)だけでなく根幹を定義する行動指針(バリュー)があると思います。10Xが掲げる3つのバリューの体現度を最大化することを目的とし、グレード制度を策定しました。現在ほぼ全員がG3というグレードに位置しており、2020年10月に全体の見直しを行う予定です。
 
G3というのは大きなイシューをプロダクトに落としこめたり、コーポレートやパートナーのイシューを解決まで自走できるシニアな人材を想定しています。どこの会社にいっても第一線で活躍できるレベルのことを指しており、現在はそのレベルのチームが揃っていることに誇りを感じています。
今後はチームがスケールするに従って、一人の生産性や創造性を1.1xにすることにも極めて大きなインパクトが生まれてきます。ここに背中を預けられるVPのポジションも創設していく予定です。
実はStailerを出した当初はここまで新規導入がスムーズに進むと思っておらず、また想定していたところ以外にもマーケットがあり、想定よりも遥かに大きなデマンドがあるということに気づかされました。
当初の方針から大きく変えて、今は新規パートナーへの導入も積極的に進めています。そこで得た知見を使ってプロダクトを一気に太らせることにフォーカスした結果、上記のような組織図を志向するに至りました。

どういう人と一緒に働きたいか

10Xの3つのバリュー
  1. 10Xから逆算する
  1. 自律する
  1. 背中を合わせる
とフィットする方を迎え入れたいと考えています。
 
「10Xから逆算する」というのは、ただ改善を積み上げていくということを良しとせず、非連続な変化・ポジティブな成長を起こすにはどうしたら良いか、未来から逆算して考えるということです。
このバリューを体現するためには「多くの人が信じない、自分だけの真実に気づくこと」からスタートしないといけません。こうした不都合な真実を見つけるには、実験を繰り返し、そこから正しく学びを得るということが必要です。小さなものから始めて10xを得る、あるいは10xを描くために小さなものに戻れるといった要素が「逆算する」というところに込められています。
「自律する」「背中を合わせる」は二つで一つです。自分に必要なことは自分で揃えたり、自分でやるべき仕事を自分で定義できたりといった自走する力。他方で自分の隣には自分と違う分野の専門家が座っているという環境の中で、お互いをリスペクトして正しく適切なコミュニケーションをする、お互いのピークが違うことを理解した上で任せ合う、あるいは吸収し合うといった姿勢を持って欲しい。そういう思想からこの2つのバリューを掲げています。
10Xはまだまだ16名という小さいチームなので「背中を合わせる」ということは非常にやりやすいと思っています。お互い自律しつつも他の人が何をしているかというのはすごく見えやすい状態です。これがスケールしていって見えづらくなったり、隣の人が何をやってるかわからなくなったりするという部分についてはドキュメントシステムやSlackなどコミュニケーションのガイドラインをしっかりつくって、良い形で社内のインタラクションが生まれるような形で設計をしています。

最後に

このコロナ禍という環境の中で、日本において今まで日の目を見ることがなかった「店舗のデジタル化」に大きな光が当たっています。あのAmazonでも実現できていない、「デイリーの買い物がECに置き換わる」という未来に向けて、世界が転がり始めていることを実感しています。
そしてこのコロナによる影響はその歩みを加速させました。非接触で生活を完結させていく必要性が改めて必要性が見直されてきています。Stailerはいま、社会に必要とされ、それに対する解を持ち、かつビジョンもある、そんなポジションに位置できていると思います。
こういった機会に巡り合うことは、起業家としてもなかなか貴重だと感じます。100年に1回の事業だと思いフルスイングをするための仲間を強く、強く募集しています。

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