非連続性”だけ”を見据えて
目次
10Xにとって最も重要なValue2020年に挑んだ「非連続性」1. 「フルオフィス」ではなく、「With リモート」の働き方へ2. 「フルスクラッチ」ではなく、「with パートナー」の事業へ3. 「フルスタック」ではなく、「with チーム」の体制へ2021年の非連続性へ向けて
10Xにとって最も重要なValue
10Xという会社には組織のOSとしてチーム全員を巻き込んで定めた3つの行動指針、10X Valuesが存在します。
それぞれValueは複数の習慣の裏にある、抽象化された行動原理を言語化したものです。抽象だけでなく、具体を示すために「Do(推奨される具体的な行動)」も併せて定められています。
3つのValuesのうち、最も10xらしさを表しているのは「10xから逆算する」というValueだと感じています。そしてこのValueには「非連続性で戦う」というDoが紐づけられています。
では「非連続性があるもの」とは一体何か?それは以下のような性質を併せ持つものだと考えます。
- 何らかの理由で解決されていないIssue
- 「探索」や「実験」を元に新たな事実を集める必要がある
- 「判断」ではなく「決断」が必要になる
2020年に挑んだ「非連続性」
10Xにとっての2020年は、これまで信じて実践してきたプラクティスを否定し、大きく3つの非連続性へチャレンジをした1年でした。
- 「フルオフィス」ではなく、「With リモート」の働き方へ
- 「フルスクラッチ」ではなく、「with パートナー」の事業へ
- 「フルスタック」ではなく、「with チーム」の体制へ
1. 「フルオフィス」ではなく、「With リモート」の働き方へ
10Xでは創業以来、「メンバー全員が同じ場所に、同じタイミングで仕事をする」というカルチャーを是としてきており、リモートワークを利用することは極めて稀でした。
その背景には、事業の不確実性に対して即座に対処できるように、雑談という形で、低いコストでFace to Faceコミュニケーションが図れる環境を整備したかったという意図があります。他方で2020年はご存知の通り新型コロナウイルスが猛威をふるい、創業以来馴染んできた働き方を0から見直す必要が発生しました。
今まで活用してこなかったリモートワークを「ベース」に置き換えなくてはいけなくなり、そのためのオンライン・ワークスペースを整えたり、新たなメンバーにセルフオンボーディングしてもらうためのガイドラインや制度を整えていく必要に迫られました。
現在は毎週1日をオフィスデーと定め全員集合し内部のピアコミュニケーションを優先し、代わりにそのほかの営業日は個々が最も仕事を進めやすい環境を自律的に選択できるという形でコントロールを個人に任せています。
半強制的に環境の変化と向き合い試行錯誤をする中で現在の形に落ち着きましたが、会社のパフォーマンス、個々のパフォーマンスは従来以上に高まったと感じています。「フルオフィスかつ少人数」だった時には気づけなかった、「いつでも雑談できる故に集中は削がれやすい」というデメリットをうまく解消し、「集中のリモート」「議論のオフィス」といった機会の明確化が可能になったためです。
会社としてはValueの一つでもある「自律」を強力に後押しするための環境整備に急速に投資を進める事ができました。社内制度という「アウトプット」が充実したこと以上に、「会社のもつ思想を細やかに言語化し、制度やドキュメントの一つ一つに巡らせていく事ができた」という副産物の方が今後の非連続な組織スケールへの助けになったのではないかと思っています。
2. 「フルスクラッチ」ではなく、「with パートナー」の事業へ
事業面では「タベリー」という創業プロダクトをクローズし、そこで得られた消費者・小売事業者双方のインサイトを抽象化し、新たにStailerというプロダクトへ昇華させました。
この事業転換は「toC」から「toBtoC」というプロダクトを提供する顧客の拡大だけではなく、もう一つ大きな非連続性を孕んでいます。それは「フルスクラッチ」で全てを自前化するという発想を捨て、「パートナーとの協働モデル」を選択したという点です。この変更は10Xのポテンシャルを非連続に拡げる契機となったと確信しています。
タベリー運営時点より、いや、創業時点より10Xが向き合っているイシューは変わりません。それは「食の日常の負担を取り除く」というものです(以下、創業直後に書いたポスト)。
ネットスーパーと連携するAPIを構築し献立から一気通関で買い物が完了できるようにする(タベリーオンライン注文機能)、自社で物流機能を構築する(タベクル)など、「柔軟に選択できる買い物体験」を社会へ揃える事へトライしたことにより、初めて10Xとしての限界に気づく事ができました。
小売というのは市場・プロセスセンター・物流倉庫など複数の拠点からの商流を束ね、顧客に鮮度のある多数のSKUを提供する最終戦線です。さらに複数の地域に跨ってサービスを展開するため、指数関数的なオペレーションの複雑さを持っています。
これをフルスクラッチで全てを作るにはどれだけ時間があっても足りません。
すでに大きなアセットを保有している小売パートナーとタッグを組み、10Xの得意なソフトウェアの力と顧客と向き合い切る力を使ってこの複雑性をシンプルにする。人に依存しないレバレッジを産み出す。今までにない買い物体験を新しいチャネルへ創出する。これらによって10xに優れた小売体験を、パートナーと一緒に実装していく方向へ大きく舵を取りました。
当然自社だけで全てがコントロールできないという、これまで向き合ったことのない不確実性が発生します。この不確実性を「なんとかしていくためのコンピテンシー」を会社へ新たに創出すること。DXを誰かに求める前に、自社が・自分が非連続な変革をし続けること。これによって先の意思決定を正解に変えていくのがこれからの自分の役目だと思っています。
3. 「フルスタック」ではなく、「with チーム」の体制へ
10Xでは「組織は事業に準ずる」という前提を共有しており、先の事業モデルの変化に伴って組織も大きく変化しました。
「一人ひとりが全てを創るフルスタック集団」から、達成すべき価値を共有し、広範に渡るサービスを提供できるようポジションを明確化、「隣のプロと協働してスループットを最大化する」というチーム体制へ真の意味で移行できたと感じています。
CFO加入によりBoardも分厚くなり、年初に8名だったチームは内定者含めて20名超へ。「会社の可能性を拡げるメンバー」に恵まれました。
ソフトウェアエンジニア主体のプロダクトメーカーから、資金調達をチームで行い、事業開発をチームで行い、パートナーサクセスをチームで行い、採用をチームで行い、内実をチームでPRしていくように*。
個人的にもこれまで事業、プロダクト、事業開発、コーポレートなどほぼ全ての機能を管掌してきたところから、一気に権限移譲を行った一年でした。
正直なところ、創業以来ずっと「自分がプロダクトなどの意思決定を移譲していく事ができるのか?」という不安を抱えていました。しかし会社という器を活用して、弾むようにパフォーマンスするメンバーの姿を見ることでその不安は払拭されました。スムーズに・大胆に移譲を進める事ができたと(自分では)思っています。
権限移譲とは任せられるチームありきのイシューなのだなと理解でき、安心して任せるチームを創っていくことに今は誇りを感じます。
また創業者である自分は常に会社にとって最も不確実で、Long termで非連続性の高いイシューを見つけ出し、検証し、チームを創って託していく。これによって「止まらぬ成長」を作り続けるべきなのだ、と自己理解を深めることにもつながりました。来年も肚決めて一番未知なことに道筋をつける役割を全うしていきたいと思います。
PS. 権限移譲についてPodcastでも取り上げています。
2021年の非連続性へ向けて
2020年末、社内向けに「中期経営計画」を発表しました。大きく3つのパートで構成されています。
- 10Xが世の中に実装したい小売体験
- 10Xがこれから創出する事業
- 事業を支える未来の組織構成
ここから逆算するに、今の10Xはプロダクトも、事業も、組織もまだ1歩目に過ぎないというのが偽らざる本音です。ネットスーパーのUXに過ぎないStailerを、小売事業者のためのOSへと非連続に引き上げていく。これが2021年から10Xが挑む非連続性です。
昨2020年はこの過程にあり、代表としての自分および会社の格が至らず、ご一緒する事ができなかった事業者もいらっしゃいます。力不足を痛感せずにはいられませんでした。伝統ある小売事業者から信頼を得て正面からその期待値を受け止められる存在になれるよう、個人と会社の格を上げていきたい。そう、心を燃やしています。
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非連続性の4つ目の性質を挙げるとするなら、「先の見えない苦しさを伴う」という事です。しかし、不確実性に折り目をつけて自分なりの答えを産み出し、検証していくその仕事は確実に「創る喜び」を与えてくれます。僕は「創造力の発揮」が生きる喜びそのものだと思っています。
これからも10Xは個々が創造力を最大化できる機会に溢れる場所にしたい。そしてもっと大きな非連続性を創れる器にできたら、と思っています。そのために今年も「会社の可能性を拡げてくれる仲間」を迎え入れたいです。ぜひ年始にお時間ある方には以下のリンクも読んでみてください。
今年もよろしくお願いします!